1年に12回しかない満月の夜。
石川賢治11年ぶりの最新作。
『月夜の晩に』
2016年、石川賢治は拠点を福岡の糸島半島に移し、新しい土地、新しい視点の月光写真の創作に取り組みました。ダイナミックな自然を求めて世界をめぐる満月の旅にひと区切りをつけ、月の満ち欠け、潮の満ち引きを身近に暮らしながら、四季折々の月夜の原風景を写真集『月夜の晩に』として撮りまとめました。
糸島半島の満天の星の下、月光に照らされた植物や昆虫の姿を中心に、北海道知床半島の流氷、初夏の青森県奥入瀬の清流、沖縄県竹富島の海に浮かぶ砂州、満月の下で咲きこぼれる桜など。北海道から沖縄まで、日本の春夏秋冬を舞台に撮り綴った神秘的な青い世界を最高品質の印刷で表現しました。
また写真集としては例を見ない右開き、表紙は古書に施された題箋貼りにするなど、11年ぶりとなる新作写真集は表紙に散りばめられた銀箔の星々も美しい愛蔵版としても魅力ある造本になっています。春夏秋冬の折々に添えられた石川の言葉と本書に寄せる想いも縦書きにして、日本の書物の美しい佇まいを感じさせる本に仕上がりました。英訳は、日本人の心象を深く愛し、百人一首をはじめ古典文学を海外に広く伝えているピーター・J・マクミラン氏が担当しています。
新作『月夜の晩に』によせて
人類は宇宙時代に入ったと言われています。
民間人による国際宇宙ステーションへの宇宙旅行の実現や、
数多くの宇宙探査機が地球に映像を送り、
人々は宇宙を理解する機会がますます増えるでしょうが、
しかし宇宙をどれだけ実感しているでしょうか。
満月の明るさは太陽光の465,000分の1。
タヒチ、ヒマラヤ、ケニヤ、ハワイ島、ウユニ塩湖など、
満月の光を求めて世界を巡った30年間の旅にひとくぎりをつけ、
2016年、福岡県の自然豊かな糸島半島へ移住しました。
真の暗闇のある場所に暮らしながら、
いにしえから多くの人たちが愛でた月夜の晩に
“地上の宇宙実感”をテーマに撮影しました。
四季折々、満月の夜。月光に照らし出された草花やいきものに
古来からの力強い生命力を感じます。
足もとの草花や昆虫を通して天空を見上げると
満天の星と一繋がりになり、宇宙本来の姿に見えます。
私たちは宇宙と繋がっているのです。
石川賢治
新作写真集
「新雪の摩周湖」 北海道川上郡
「テングダケ」 福岡県糸島半島
「ヒメジョオン」福岡県糸島半島
「舞い上がる」 福岡県糸島半島
「月下美人」静岡県伊東市
「砂州」沖縄県竹富島